2008年01月

秋の牢獄 恒川光太郎

powerd by Amazon360
この作品の中古本をチェックする(BOOKOFF)



恒川光太郎さんの作品もこれで、3作目。
おもしろさが上がっていると言う印象は個人的に受けませんでしたが、
下がっていると言うことは無く、不思議な世界で物語を展開していくというスタイルを
確立されたような気がします。
3つの作品のオムニバス集。


「秋の牢獄」
主人公の女子大生はある日起きると、きのうと同じ11月7日であることに気づく。
周りの人間は、同じ11月7日だからみんな同じ行動を取っていく。
そんな彼女の元に、同じように11月7日を繰り返している人がやってくる。

「神家没落」
ふと見つけた古い家。そこで主人公の青年は家を守るように老人に頼まれる。
その老人が消えた後、家から出られなくなってしまう青年。
どうやら、違う人と交代することで家から出られるようになるようだが・・・

「幻は夜に成長する」
幻を見せる力を持っている少女。
彼女はその力を封印して生きてきた。
しかし、徐々に力を抑えきれなくなってくる。


物語の設定は、惹きこまれるものばかり。
その分、オチに期待してしまいますが、それほど気の利いたオチが待っているわけじゃないのが残念。
でも、恒川さんの世界観は十二分に現れています。


個人的5つ星:☆☆☆☆


家日和 奥田英朗

powerd by Amazon360
この作品の中古本をチェックする(BOOKOFF)



家をテーマにした、6本の短編集です。

いかにも、奥田さんらしいどれも軽くて読みやすい短編ばかり。
コミック小説というんでしょうか。



「サニーデイ」
ネットオークションを始めた妻。
彼女は社会と接点を持ったことがうれしく、とことんハマってしまう。
そして、いつしかダンナの持ち物も、売ってしまうように・・・。

「ここが青山」
東京の青山ではなく、「人間至るところに青山あり」の青山(せいざん)です。
ある日、会社が倒産してしまった夫。
が、妻がもといた会社で働き始めたことで、主夫として家事をするように。
そして、徐々に主夫生活が楽になっていく。

「家においでよ」
別居をすることになった夫。
それまで妻の趣味でそろえられたインテリアを買い換えていくうちに、
自分の城へと変貌させていく。
趣味のものを集めた部屋には、同僚の男たちが集まってきた。

「グレープフルーツモンスター」
DMの宛名書きのアルバイトをする妻。
その担当の若い男性に会った夜は、なぜか官能的な夢を見るように。
そして、その夢がどんどん楽しみになっていく。

「夫とカーテン」
イラストレーターをしている妻。
夫は、とにかく事業をしたい男で、今回はカーテン屋をやるという。
その無計画な生活に嫌気がさしながらも、その生活にある法則があることに気づいた。

「妻と玄米御飯」
小説家の妻は、小説家がブレイクした途端、ロハスにはまるようになっていった。
玄米御飯に、エコグッズ。
小説家はそれをネタに小説を書こうと思いつく。
もしかしたら、奥田さん自身のエピソードなのか?と思わせる記述が多いです。


さして、大きなオチはないんですが、読後感がいいのはやはりドラマがあるからなんでしょうか。
素直におもしろかったといえる一冊だと思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆


時生(トキオ) 東野圭吾

powerd by Amazon360
この作品の中古本をチェックする(BOOKOFF)



ファンタジー&クライム小説。


主人公の男性にはグレゴリウス症候群の「時生」と言う名の子供がいた。
彼がとうとうもうすぐかという時に、主人公は妻にとある告白をする。
「実は、オレは昔、トキオに会ったことがあるんだ」

主人公がまだ23歳の時、親に捨てられた境遇を呪い、
毎日仕事もせずに自堕落に過ごしていた。
そこに、トキオと名乗る少年が、主人公の親戚だと言って近づいてくる。
追い返せないまま一緒に過ごしているが、ある時主人公が同居している女性がいなくなった。
彼女の行方を追っていくと、怪しい人物からも彼女を探してほしいと頼まれる。
彼女の身を案じて、手がかりを求めて主人公とトキオは共に動き始める。


かなりの長編小説。
基本は、頭の回転が速いトキオという少年と、ダメ男の主人公のデコボココンビが、
1人の女性を救い出そうと走り回る、アクション系作品なので、
それほど深く考えずに、楽しく読むことができますが、
その過程で、主人公のダメっぷりがトキオによって徐々に立ち直っていきます。

もちろん、最後まで読めるんですが、ここまで長くなくても・・・と思ってしまうところも。
また、細かいことが気になる人は若干のアラが目に付いてしまうかもしれません。

とはいいつつも、クライマックスでの読後感のよさはさすが。
それまではドキドキしながら読んでいるんですが、最後は心を温かくしてくれます。

東野さんの作品と考えると、物足りない気持ちにもなりますが、
読んで損したという気持ちにはなりません。


個人的5つ星:☆☆☆


■テレビドラマ・・・2004.8~NHKで全20回放送。出演:国分太一、櫻井翔、保田圭、井上和香など。


おれは非情勤 東野圭吾

powerd by Amazon360
この作品の中古本をチェックする(BOOKOFF)



小学生向けの学習雑誌に掲載された、子供向きオムニバス推理小説です。


主人公は、ミステリー作家を目指す非常勤の小学校教師。
先生の空きが出たときだけの代理教師として、色んな学校に赴任する。
そこの赴任先で、様々な事件が起こり、その教師が事件を解決する。

「6×3」
1人の先生が殺され、近くには「6×3」のダイイングメッセージが。
このメッセージが示す犯人とは!?

「1/64」
体育の時間に2人の生徒の財布が盗まれた。
その事件に、女子生徒がつぶやいた「1/64」という数字が絡んでいることを突き止める。

「10×5+5+1」
前任の先生が亡くなったため、赴任してきた主人公。
そこに刑事がやってきて、その先生が亡くなったときに教室の黒板に
「10×5+5+1」という板書が残っていたことを聞く。

「ウラコン」
自殺未遂を起こした女子生徒。彼女は「ウラコン」を悩みに思っていたという。
その「ウラコン」の意味を主人公は探っていく。

「ムトタト」
ある時、「修学旅行を辞めるように」という脅迫文が教室にあった。
その横の黒板には「先生ムトタトアケルナ」という板書が・・・。

「カミノミズ」
生徒の一人が水を飲んで苦しみだした。毒が入っていたらしい。
その水には「カミノミズ」と書かれていた。

下2作品は「非常勤シリーズ」ではなく、小学生を主人公とした推理ものです。

「放火魔をさがせ」
父親と夜回りをしている時に、休憩所で放火にあった主人公の小学生。
逃げようとした時にドアが開かなかったことは何を意味しているのか・・・。

「幽霊からの電話」
主人公の家も含め、クラスの生徒数人に家に謎の女性から電話があった。
その声の主を探してみると、その女性は既に亡くなっていた。


小学生用の推理小説ですが、大人が読んでも楽しめる一冊です。
逆に、それほど推理小説をたくさん読んでいない僕にとっては、
トリックが簡単なだけになるほどと素直に納得できるものが多かったです。

さらに、ただのミステリーだけではなくすべての作品で子供へのメッセージが
込められていて、物語としてもおもしろい作品ばかり。

隠れた名作かもしれません。


個人的5つ星:☆☆☆☆

さまよう刃 東野圭吾

powerd by Amazon360
この作品の中古本をチェックする(BOOKOFF)



復讐ミステリー。


幸せな生活を営んでいる父子家庭。しかし、その娘が少年たちによって強姦された上に殺されてしまう。
謎の密告者によって、父親は犯人が少年2人であること、そして1人の家を知る。
娘がレイプされたビデオを発見した父親は、その時帰ってきた少年1人を殺し、
さらに、逃げたもう1人を追って復讐の旅に出る・・・という話。


謎の密告者は誰なのか?逃げたもう1人の実行犯は誰なのか?
そんなミステリー的な要素もあるんですが、やはりこの作品の軸は「なにが正しいのか」ということ。

快楽のためにレイプし殺害までした少年に復讐しようとしている父親が正義なのか。
少年を逮捕し、少年法によって裁こうとする警察が正義なのか。

その答えは復讐しようとしている父親自身にもわからず、葛藤していきます。

物語の終末を読んで、どういう風に取るのか、それは読む人次第だとは思いますが、
それぞれ、なにかが心に残る一冊だと思います。
「手紙」とはまた違った名作といえるでしょう。
ただ、犯人の少年たちの身勝手さに、どうしても不快感が出てしまうので、星は4つにしてみました。


個人的5つ星:☆☆☆☆