REVERSE 石田衣良

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恋愛小説。元々、ネットで連載されていたものです。

29歳のITベンチャー企業で働く男と、ファッション関係の輸入商社で働く同じく20代後半の女性。
彼らは共にとあるSNSに参加していたが、男はネットでは女性になりきり、
女性は、ネットでは男性になりきっていた。
そして、2人はメールを交換し合うようになり、リアル世界での性別とそれぞれ反対の性別で会話していた。
徐々に、お互いに相手を頼るようになり、ついには一目見てみたいと願うようになる・・・。


正直、石田さんの恋愛小説はピンと来るものが少なかったんですが、
これは素直におもしろいと思える一冊でした。
仕事に生きる女性と、周りに振り回される男というキャラクターが活きていて、
設定はさほど目新しくもないんですが、そんなことを気にせずにグイグイと読めてしまいます。

全体的に軽いタッチですが、このテンポ感は石田さんのおもしろさだと思うので、
石田さんファンなら読んで損は無いと思います。

ただ、個人的な感想としては、IWGPシリーズの一作品にしても良かった気もします。


個人的5つ星:☆☆☆☆


さよなら、そしてこんにちは 荻原浩

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ユーモア小説を集めた、短編集。


「さよなら、そしてこんにちは」
葬儀社で働く主人公の男性。来る日も来る日もライバル会社と仕事の取り合いをしている。
決して笑ってはいけない職業。しかし、これから産まれてくる子供のことを考え、
つい口元が緩んでしまう。

「ビューティフルライフ」
突然、田舎で農業を始めると父が言い始め、家族は田舎へ引っ越してきた。
期待する優雅な田舎暮らしとはかけ離れた生活がそこでは待っていた。

「スーパーマンの憂鬱」
スーパーで働く主人公。テレビで特集される食材によって、仕入れを変えなければいけないため、
毎日、テレビに釘付けになっていた。
なんとかして、その情報を先に得られないものか。その思いが離れなかった。

「美獣戦隊ナイトレンジャー」
主人公の母親は、戦隊ものに出てくる俳優に心を奪われていた。
しかし、それを周りに言うわけにもいかず、子供をダシにして、なんとか毎回
テレビに釘付けになっていた。

「寿し辰のいちばん長い日」
頑固職人と思われている寿司職人の主人公。
本当はテレビや雑誌で取り上げて、客を増やしたいがなかなか取材の依頼が来ない。
そんな時、おかしな客がやってくる。

「スローライフ」
スローフードを早くから学んでいた主人公は、スローライフの流行に従って
引っ張りだこの状態になっていた。
しかし、マスコミに振り回されて、疲れる日々を過ごす。

「長福寺のメリークリスマス」
住職である主人公は、家族からクリスマスを祝いたいと言われても断ってきた。
しかし、ある時檀家のクリスマスを見て、自らもやってみたいと思い始める。
周りにバレないように、ツリーや飾りを買い求めていくが・・・


腹を抱えて笑うような作品じゃありませんが、ニヤリとしてしまう話ばかりです。
とりたてて大きな展開があるわけじゃないんですが、すべてオチがあるので、
読後感はスッキリしています。

この作品を読んで気に入ったら、他の長めの荻原作品を読んでみてはいかがでしょうか。


個人的5つ星:☆☆☆☆


女たちの内戦 桂望実

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なぜか人生がうまくいかない女性たちの物語。
連作になっていますが、基本的にオムニバスです。


「真紀 二十九歳の戦い」
30歳を前にして、結婚に焦りを覚える主人公。
合コンにも参加するが、ろくな男と出会えない。

「佳乃 三十四歳の戦い」
早くして結婚した主人公は、徐々に子供が手がかからなくなり、
「なにかしたい」という思いだけがどんどん膨らんでいった。
自分が専業主婦で毎日を過ごしていることに、焦りを覚え始める。

「めぐみ 三十九歳の戦い」
私立の高校の企画部をしている主人公。
別にキャリアを望んでいたわけではなかったが、気づいたらいつの間にか
結婚をしないまま時が過ぎていた。
年下の恋人はいるが、どうしても彼との結婚が考えられず、どうしようかと悩み始める。

「治子 四十五歳の戦い」

セレクトショップのオーナーはバツイチだった。
徐々にお店の経営がうまくいかなくなり、お金を借りられるところを
探し回ることに。


どれも不幸な女性たちの生き方を描いています。
温かい作品を書いてきた桂さんが新たな作品に挑戦したようですが、
この分野ではやはり唯川恵さんなどの先輩のほうが上。
目新しくもないし、ちょっと残念でした。

他の作品の完成度に比べて、どうしても見劣りしてしまいます。


個人的5つ星:☆☆☆


借金取りの王子 垣根涼介

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サラリーマン小説。
「君たちに明日はない」の続編です。

主人公が働いているのは、「リストラ会社」。
企業の依頼を受け、その企業の社員を面接し、一定以上の人間に依願退職を勧めるのが
彼の仕事だった。
怒る人、泣く人、すがりつく人、色んなリストラ候補者がいる中で、彼は自らのポリシーを持って
仕事を行なっていたが、そこには色んな人間ドラマがあった。

そんなオムニバス形式の物語。

「1.二億円の女」
デパートの外商部門からリストラの依頼を受けた主人公は、
そこでもっとも売上を上げている女性の面接に当たる。

「2.女難の相」
今回のターゲットは生命保険会社。そこで自ら出世コースから外れた中年のおじさんに
主人公は興味を惹かれる。

「3.借金取りの王子」
消費者金融の店長がターゲット。若き店長は部下に慕われていた。
しかし、彼はもっと他の業種でも活躍できるのに、決して辞めようとはしなかった。

「4.山里の娘」
とある、老舗旅館がターゲットになった。しかし、今回は退職に追い込む必要は無いと言う。
しかし、そんな中1人のよくできる仲居が退職を意識するようになった。

「5.人にやさしく」
主人公の会社で、彼の提案で新たに人材派遣サービスを行なうことになった。
そこで、自分の恋人から人材派遣の依頼を受けた主人公は、その会社にピッタリの人材を探す。


前作を読まれた方はわかると思いますが、毎回、リストラの対象となる業種は変わります。
そして、非常にリサーチがしっかりしていて、それぞれの裏側が楽しめます。

多くの人が働いていますが、自分がなんのために働くのか、
自分は社会に貢献しているのか、そんなメッセージが伝わってくる一冊です。
前作を読んだ読者の期待を裏切ることはありません。


個人的5つ星:☆☆☆☆


鹿男あをによし 万城目学

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ファンタジー系小説?


奈良県のとある女子高校に非常勤講師として教壇に立つことになった大学の研究員。
ある日、急に鹿に話しかけられ「運び番」になれと言われる。
「目」と言われるそれを運ばなければ日本に天変地異が起こるとも。
仕方なく、その目を運ぼうとするがいつの間にかその「目」が無くなってしまう・・・


非常に不思議な設定の小説です。
しかし、頭がこんがらがることが無いのは万城目さんのわかりやすい文体だからなんでしょうか。

まるで現代のおとぎ話を読んでいるような感覚。
ユーモアと、青春もののような高揚感が共存していて、素直におもしろいといえる一冊でした。
ただ、「意外性」がそんなに無かったのが残念と言うのは少し欲張りなんでしょうか。


個人的5つ星:☆☆☆☆