流しのしたの骨 江國香織

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家族小説。


主人公の家族は、本人も含めて変わっていた。
いつも優しいが、決して自分の意思を曲げない長女。
すぐに人を好きになってしまう次女。
どこか冷めている三女の主人公。
家族の中で一番バランスが取れている弟。
社会のルールをきっちり守る父に、その父を愛している母。

この家族はいつもお互いを支えあい、そしてトラブルを乗り越えていく。


変わった家族たちの日常をただ描いているというタイプの作品。
それぞれ、ちょっとした事件が起きて、それに対する家族の対応を描いています。

特に展開が多いわけではないので、ちょっと退屈ではありますが、
読後感は、ホワ~と暖かい気持ちになれる一冊。

男性よりも、女性の方が楽しく読めると思います。



個人的5つ星:☆☆☆


陪審法廷 楡周平

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裁判小説。陪審員制度に一石を投じる作品です。


グアテマラで生まれた少女は、ストリートチルドレンでいたが、未来を求めて
アメリカに密入国。
そして、アメリカ人の医師夫婦の下に養子に行くことに。

あまりにも幸せな毎日だったが、ある日養父にレイプをされてしまう。
しかし、養母を愛していたため、家庭を崩壊させることはできないと
耐える毎日だった。

それを幼馴染だった少年につい告白してしまったところ、少年はその養父を殺害してしまう。
逮捕された少年は陪審員の手によって、裁判にかけられることになった。


アメリカの陪審員制度がよくわかる一冊。
もちろん、これだけの側面ではないんですが、陪審員制度という不思議な制度について
それぞれ個人が考えるきっかけにはなると思います。

陪審員が考えるのは有罪か無罪か。
決して、「有罪だけど罪は軽めに」といった提案はできません。

この作品は、前半は事件について。
後半は陪審員たちの議論がメインになってきます。

まあ、ちょっとセリフが長くてめんどくさいところもありますが、
日本に裁判員制度が入る今、読んでおいた方がいい一冊です。


個人的5つ星:☆☆☆☆



その日のまえに 重松清

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「死と生」をテーマにした、オムニバスストーリー。
余命を宣告された者、家族がまもなく死んでしまう者、残された家族・・・。
様々な状況の人たちがそれぞれ主人公になっています。


「ひこうき雲」
子供2人を抱えた父親。
とある駅を通過する際、かつてそこに住んでいた時の記憶が蘇ってくる。
それは、小学校の時、勝気な女の子が突然入院してしまい、お見舞いに行ったときの記憶だった。

「朝日のあたる家」
ダンナさんを亡くし、娘と2人で住んでいた元・教師の女性。
偶然出会った元教え子から、意外な事実を知る。

「潮騒」
余命を宣告された男は、いつしか小学校の時に遊んでいた浜辺にやってきた。
そこで会ったのは、かつてのガキ大将。
2人は共通の友人を、この浜辺で亡くしていた。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」
母子家庭。高校生の息子は思春期らしく母親をうっとおしがっていた。
ある日、母親が健康診断で再検査を受けることになったという。
焦る息子に対して、母は冷静で、ストリートミュージシャンに夢中になっていると言う。

「その日のまえに」
余命を宣告された妻と一緒に、2人で思い出の地を渡り歩く旅に出た。
しかし、その街は昔とはだいぶ変わっていた。

「その日」
余命を宣告された妻は、想像以上に状況が悪化し、ついに”その日”を迎えることとなる。

「その日のあとで」
妻が死んで2ヶ月。徐々に日常を取り戻していく夫がいた。
が、その時妻からの手紙を受け取ることになる。


ただ、「死」を通じて感動を扱っているならなんとも思わなかったんですが、
感動させたいと言うよりも、いざ自分が死に直面したら、いざ自分の大切な人が死ぬことになったら
そんなことを考えさせてくれる一冊でした。

また、オムニバスですが、ちょっとずつリンクしているところもあって、
物語としてなるほどと思うところもあり、満足な読後感を得られます。

「また、死んじゃう話かあ」と思っている人も、
読んで損は無いと思います。

個人的5つ星:☆☆☆☆


劫尽童女 恩田陸

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「劫尽童女」は”こうじんどうじょ”と読みます。
仏教で「劫尽火」と言われるものがあり、それは”世界を焼き尽くす炎”を表すそうで、
つまり、この作品は”世界を焼き尽くす力を持った少女”の話です。

表紙とタイトルの雰囲気から、おとぎ話のようなイメージがありますが、
SFアクション小説というんでしょうか。


とある博士が生み出した、様々な力を持った1人の少女。
彼女の力、そしてその作り方を知ろうと、彼女を追ってくる組織たち。
しかし、彼女はそんな追っ手を次々に打破。

そこで少女が感じるのは、孤独感。
普通の人間ではない自分の気持ちをわかってくれる人は誰もいない・・・。
そんな葛藤の中、少女は成長するにしたがって、次々と新しい力が開眼していく。


はっきりいって、小学生や中学生の読み物と言う印象が強いです。
序盤の雰囲気は非常にいいんですが、徐々にアクションシーン(?)というか、
戦って、逃げて・・・という繰り返しの展開になってしまっています。
前フリもなく突如現れる味方や敵。

ドンパチとやってばかりですので、まあサクっと読めますが、最後に何も残らない一冊でした。
恩田さんらしい、”意外な展開”が無かったのが残念です。


個人的5つ星:☆☆☆


魔球 東野圭吾

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典型的な推理小説。


1人の天才高校生ピッチャー。
彼は1人で無名な高校を甲子園まで連れて行った。
そして、9回2アウト満塁の場面で、彼が投げた球は”魔球”だった・・・。

その後、突然彼の相棒だったキャッチャーが刺殺体で発見される。
しかし、さらに悲劇は続いていくのだった。

東野さんの初期の作品ですが、ただの推理ミステリーに囚われず、
ヒューマンドラマ小説としても読めました。
天才ピッチャーだけど、彼を取り巻く複雑な家庭環境。
彼の家族を思う気持ち。
そんな中でストイックに野球に打ち込んでいる姿は、青春小説ともいえるかもしれません。

そして、推理ミステリーとしても、この殺人事件ではなく、
突如起こる爆発予告事件や誘拐事件など、一見関係の無い事件が、
終盤に向けて一気に絡み合っていきます。

出版された年度はかなり前ですが、今読んでもまったく古さを感じさせない一冊です。


個人的5つ星:☆☆☆☆