黒笑小説 東野圭吾

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「怪笑小説」「毒笑小説」に続く、ブラックユーモア短編集第3弾。
ほかの東野さんの作品とは一線を画して、
ちょっと皮肉った視点のユーモアと、最後に「そういうことか」というオチが
最後まで一気に読ませてくれます。


「もうひとつの助走」
長年作家をやっているが、いまいちパッとせず、ヒット作品もない作家。
今年もとある文学賞の発表の日がやってきて、候補となった彼の周りに
編集者たちが集まった。
(ずっと候補続きで直木賞をとれなかった東野さんの自虐ネタ?)
「巨乳妄想症候群」
ある日、突然主人公はすべての丸いものが巨乳に見えるようになった。
友人の精神科医に流行の「巨乳妄想症行群」と診断される。

「インポグラ」
偶然できた、24時間勃起できなくなる薬。
主人公のCMプランナーは、この薬をどういう風に売ればいいのかと相談を持ちかけられた。

「みえすぎ」
主人公の目に、すべての細かい粒子が見えるようになった。
ハウスダスト、タバコの煙、上司の息・・・。
その能力は日に日に強くなっていく。

「モテモテ・スプレー」
とりたてて顔も悪くなく、性格も普通な主人公は、とにかくモテなかった。
ある日、ネットで見つけた研究所で、「モテモテ・スプレー」を手渡される。

「線香花火」
「もうひとつの助走」のアナザーストーリー。
とある文学賞の新人賞を受賞した若手作家は、プロ作家として明るい道が開けたと
どんどん妄想を膨らませていくが・・・。

「過去の人」
「線香花火」の続編。
新人賞受賞から1年後。彼は同じ文学賞の授賞式に招待された。
そこで、彼は色んな人から声をかけられることを期待するが・・・。

「シンデレラ白夜行」
ごぞんじ「シンデレラ」のストーリーを、東野さんの視点で書かれた作品。

「ストーカー入門」
突然彼女にフラれた主人公。が、その1週間後「好きならストーカーしなさいよ」と
ムチャな要求をされることに。

「臨海家族」
子供のおもちゃは多様化する一方。
主人公の家庭でも、娘がアニメに登場するグッズをやたらと欲しがっていく。
タイトルの意味が最後の最後でわかります。

「笑わない男」
若手のお笑いコンビは、ウケないことに悩んでいた。
修行のために、とある高級ホテルのボーイさんを笑わせようとするが・・・。

「奇跡の一枚」
父親似であまりきれいではない大学生の女の子。
が、とある旅行で撮った一枚だけが、まるで別人のようによく撮れていた。

「選考会」
「もうひとつの助走」の続編的作品。
パッとしない作家の主人公は、ついにとある文学賞の選考委員に選ばれた。
気合十分に選考会に乗り込んでいくが・・・。


どれもオチがきっちりあって、読後感がスッキリする作品ばかり。
好みはあると思いますが、ハズレ作品がないのがすごいです。


個人的5つ星:☆☆☆☆

深紅 野沢尚

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第22回(2001年)吉川英治文学新人賞・受賞作品。
サスペンス・ミステリー。


小学6年生の女の子が修学旅行中に、突然担任に呼び出される。
はっきりとは言わないが、家族に大変なことが起こったと。
そして、病院に行ってみると、父・母・弟2人が殺されていた。
その後、彼女は父に恨みを持った男の犯行だったことを知る。

それから時が流れて彼女は大学生になった。
その時、犯人の男に死刑判決が下る。
彼女は、知り合いのルポライターから、犯人の娘の居所を聞き、
彼女の元へ、偽名を使って現れる・・・。


冒頭は、小学生である主人公が病院で家族の死体に出会うまでの経緯、
そして、その後犯人がなぜ犯行を犯したのか、「上申書の掲載」という形で、
犯人の一人称で父に恨みを持つまでと、犯行当日の心理状態が綴られています。

ここまではとにかく緊迫感に包まれ、途中で止めることができませんでした。

そして、中盤から大学生となった主人公の今の心理状態と、犯人の娘と出会い、
彼女と親しくなっていく流れになるんですが、ここがちょっと細かすぎて
かったるいと感じてしまいます。

さらに、その後話は急展開するんですが、正直「なんで?」と疑問が沸くままに
物語は終了・・・。
ちょっと残念な読後感です。

もうちょっと整理されてれば読みやすかったのになあという思いはありますが、
その文章力とリアリティーは、一読の価値はあるかと思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆



■映画・・・2005.9公開。監督:月野木隆。出演:内山理名、水川あさみ、小日向文世、緒形直人など。

巨船ベラス・レトラス 筒井康隆

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最近の文学界を批判した(?)作品。


新進の文芸雑誌「ベラス・レトラス」。
この雑誌には、数多くの流行作家が、作品を載せていた。
しかし、雑誌オーナーからの「前衛的なものを」という注文に対して、
それを意識するあまり、意味のない文章ばかりを書く作家たち。
そんな彼らは、いつしかベラス・レトラスという異次元の船に乗るようになった。


前半は現実世界で物語が展開するので、多少おもしろく読めましたが、
後半になるにしたがって、どんどん意味がわからなくなりました。
作家・筒井康隆さんは今の文学界になんかしらの危惧を抱いているんだろうなと
それはわかりましたが、具体的にどういうことに対してなのかは、
この作品を読む限りでは、僕にはわかりませんでした。

文学というものを正面から受け止めている人には、すごく大切なメッセージが
あるのかもしれませんが、このサイトのタイトル通り、「なーんとなく」本を読んでいる
僕には、意味もわからず、メッセージ性もわからず、突飛だなあという感想だけでした。

唯一、作品の中で語られる「筒井康隆に実際に起きた盗作事件」については、
へ~そんなこともあるんだと、ニュースとしておもしろかったです。


個人的5つ星:☆☆



四度目の氷河期 荻原浩

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青春&恋愛小説といえると思います。
第136回(2006年後期)直木賞・候補作品。


主人公は、シングルマザーの少年。
父親は外国人らしく、髪や肌の色、そして彫りの深さなどが周りと違っていて、
常に彼は1人ぼっちだった。
また、田舎であったために母親と共に差別を受け、育ってきた。

母親が遺伝子工学の学者だったこと、母親が父親のことを隠し続けることから、
彼はいつしか自分のことをクロマニヨン人の子供だと思い始める。
石器を作り、槍投げの練習をする日々。

そんな彼の前に、父親から虐待を受けている少女が現れる。


設定の突飛さはありますが、実はあまりストーリー展開に生きていない気がします。
ただ、そんな突飛さを置いたとしても、常に一人ぼっちだった少年が、
徐々に成長していく姿は気持ちよく、どんな結末が待っているんだろうと、
一気にページをめくることができました。

正直、「僕たちの戦争」「明日の記憶」辺りから荻原さんはシリアス路線になってしまい、
この2作品以降、どうもピンと来ないことが多かったんですが、
久しぶりにおもしろいものを読んだという気になりました。

荻原さんらしいコメディーさは一切ありませんが、これはこれで楽しめると思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆


真夏の島に咲く花は 垣根涼介

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恋愛&ヒューマン小説とでも言うんでしょうか。


オセアニアに存在する島国・フィジー。
この国は、昔からのフィジー系住民と、
イギリス植民地時代に連れてこられたインド系住民に二分されている。

そんな世界で暮らす、日本からフィジーに帰化した若者。
彼は親から日本料理屋を継ぎ、観光客相手に暮らしていて、
インド系の女性と付き合っていただった。

しかし、その恋人はかつて友人であるフィジー系と付き合っていたが、
やはり人種の壁の厚さから別れてしまったという過去を持つ。
彼はどうしても恋人がまだ元カレを好きなんじゃないかという疑惑を捨て切れなかった。

そんなある日、フィジー系住民によるクーデターが起きてしまう。


とにかく、フィジーという国についてよくわかる一冊。
食べ物がふんだんにあるため、働く意欲がまるでないフィジー系住民たち。
でも、それは怠け者というだけではない、伝統的なものだということがわかります。

ただ、フィジーという国のことがよくわかるというだけで、物語としてはちょっと展開が少なく、
垣根さんのスピード感がこの作品には感じられません。

また、どうしても登場人物の名前がすべてカタカナなので、多くなればなるほど、
どうしても頭に入ってきませんでした。

日本やアメリカ、ヨーロッパなどとはまったく違った価値観を持つと言う世界を覗くのは
おもしろいですが、ストーリーはちょっと残念です。

個人的5つ星:☆☆☆