夜市 恒川光太郎

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第12回日本ホラー小説大賞受賞作品。
それも、史上最高傑作と言われたほど、完成度の高い作品です。

おとぎ話の現代アレンジのような、ホラー小説。
表題作「夜市」と、「風の古市」の2作が収録されています。


「夜市」
主人公の少女は、元同級生の男の子に「夜市」に行こうと誘われた。
岬の森の奥に突如として現れた夜市は、妖怪のような商品たちが、
ありとあらゆるものを売っていた。
そこで、男の子が買おうとしていたのは・・・。

「風の古市」
子供の頃に見つけた不思議な抜け道。
そこは夜になるとお化けが出るという。
少し大きくなって小学6年生になったとき、少年は友人と共に再びその道にやってきた。
が、歩いても歩いても出口が見つからないまま、日が暮れていった。


まるで、おとぎ話を読んでいるような気にさせられました。
語り口は優しく、読みやすい。
でも、その設定は非常に不思議なものです。

展開も絶妙で、最後に行けばいくほど、これでもかと様々な事実が明らかになっていきます。
テイストは、乙一さんに似ているんじゃないでしょうか。


個人的5つ星:☆☆☆☆


OUT 桐野夏生

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「このミステリーがすごい!」1997年第1位。
日本推理作家協会賞・受賞作品。
1998年アメリカ・エドガー賞、ノミネート作品。
クライム(犯罪)小説。


お弁当工場で夜勤を務める主婦4人組。
年齢・性格も違うこの4人は、辛いこの仕事の中で、なんとなくつるんでいた。
ある日、その中の1人がDVを振るった夫を絞め殺してしまう。
困ったその主婦は、友人の中から一番頼りになる主婦に電話したところ、
「私が処理してあげる」という。
そして、その友人は他の2人も巻き込んで、その死体をバラバラにして遺棄したのだが・・・


こういう、たくさんの賞を受賞している作品は、期待度が高すぎて
「こんなものか」という印象を受けてしまうんですが、この作品はその期待の上をいってくれました。

主婦4人のどこか狂気的なキャラクター。
さらに、その家族やサラ金、ギャンブル店の店長など、登場人物は数多いんですが、
それぞれに個性があり、まったく頭がこんがらがることがありません。

犯人はいったい誰?といったタイプの作品ではなく、
犯罪を犯した主婦たちに忍び寄ってくる刑事や裏社会の人間をどう乗り切るのか
という作品です。

文庫本2冊というボリュームなんですが、本当に一気に読んでしまいました。
途中で止めることができないので、時間のある時に読むことをオススメします。


個人的5つ星:☆☆☆☆☆


■映画・・・2002.10公開。監督:平山秀幸。出演:原田美枝子、倍賞美津子、室井 滋、西田尚美など。



■テレビドラマ・・・1999年、フジテレビ系にて放送。出演:田中美佐子、飯島直子、渡辺えり子、高田聖子、原沙知絵。
          飯島直子演じる婦人警官、井ロ則子はこのドラマだけのキャラクター。ビデオのみ。おそらく絶版。



■ハリウッド映画・・・中田秀夫監督がハリウッドでメガホンを取る企画が進行中らしい。


地下鉄に乗って 浅田次郎

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※どちらも文庫です。中身は同じなので安いほうをどうぞ。



第16回(1995年)吉川英治文学新人賞受賞作品。
タイムスリップの要素を持った、ヒューマンドラマ的小説。


主人公の中年男性は、父を憎んでいた。
事業家である父は、妾を囲い、兄が父と口論して自殺した時も冷静だったから。
そんな自分も年を取り、父から距離を置いていた。
ところがある日、地下鉄からふと思い立ったように出口から地上に出ると、
そこは昭和39年の日本・・・。そして、父の過去を見てしまう。


戦時中、戦後の日本の様子、その頃の日本人のパワーが感じられました。
戦争ものによくありがちな、説明っぽくて読みづらいということもありません。
展開、キャラクターともに完成された小説だとは思います。

が、そんなに深く感動するというほどじゃありません。
単純に、その時代を知らないから、なんとなく異世界のように感じて、
感情移入ができないからかもしれませんが。

いい小説だとは思いますが、10年以上前の作品だからかやはりちょっと古いのかも


個人的5つ星:☆☆☆☆


■映画・・・2006.10公開。監督:篠原哲雄。出演:堤真一、岡本綾、大沢たかお、常盤貴子など。



■エッセイ付き小説・・・本編の小説のほかに、浅田次郎さんのエッセイが加えられたもの。



■マンガ・・・2006.10発売。作画:もりひのと。



■テレビドラマ・・・「もういちど地下鉄に乗って」。2006.10にテレビ朝日系列で放送された、映画のアナザーストーリー。全4話。

もういちどメトロに乗って・公式HP

アジアンタムブルー 大崎善生

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パイロットフィッシュ」の続編。・・・というより、それ以前のお話。
スターウォーズで言うところのエピソード1みたいなものですね。
ですが、関係あるようであまり関係がない気がしました。
単純に登場人物(主人公)が一緒ということくらいで、さしてどちらから読んでも支障はないかと思います。


主人公は、エロ本の編集者。
そんな彼がSMの女王様から1人のカメラマンの女の子を紹介され、そのこといつしか付き合うように。
が、彼女がある日、末期ガンに冒されてしまう・・・。


迫り来る死。それをそばで見ている恋人。
どうやっても切ないし、彼女の言葉、恋人の思いは、確かにグッときます。
泣いてしまう方も多いでしょう。

ただ、前半は意味がわからないところが多々ありました。
ですが、なんか登場人物みんながどこか”変人”な感じで哲学的なセリフが交わされます。
それが、わかるようなわからないような・・・といったところ。

後半は急にわかりやすく、一気にクライマックスへと駆け上がっていきます。
読後感は切なく、「いい本だった」と思う方も方も多いでしょう。

前半を読みきれば、どこか心に残る一冊になると思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆


■映画・・・2006.11公開。監督:藤田明二。出演:阿部寛、松下奈緒、小島聖、佐々木蔵之介など。



ギャングスター・レッスン 垣根涼介

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クライム(犯罪)小説。
ヒートアイランド」の続編にあたる作品です。

こちらから読んでもいいんですが、「ヒートアイランド」を読むときにおもしろさが半減してしまうので
やはり、順番通りに読むことをオススメします。


前作で、ストリートギャングのヘッドをしていた19歳の「アキ」。
それから1年経って、20歳になったとき、裏社会の金を奪う犯罪チームに入ることとなる。

一人前になるための訓練を、チーム仲間となった2人の中年男性から徹底的に仕込まれる少年。
そして、いよいよデビューするときがやってきた。


前作で遺憾なく発揮されたスピード感溢れる文章は健在。
垣根さんが車好きということもあって、車に関する描写はかなり詳しいものです。
僕は、車のことをよく知らないので、流し読みしましたが、別にそこは物語のおもしろさには関係ありません。
車が好きな人なら、もっとおもしろく読めることでしょう。

メインの軸は、主人公の少年アキのデビューへと至る道ですが、
その過程で細かなエピソードが間に入ってきます。
ですから、連作短編集を読む気持ちで、飽きずに読むことができました。

じっくりと細かい部分をかみ締めながら読む人には、ちょっとご都合主義なところが気にかかるかもしれませんが、
個人的には前作同様許せる範囲。

ヒートアイランドを一気に読んだ人なら、この作品もまた一気に読めると思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆