誘拐ラプソディー 荻原浩

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コメディー&ヒューマン小説。


38歳の主人公は、典型的なダメ人間。
お金はすべてギャンブルで失い、窃盗で3回服役。
果ては借金で終われる上に、職場の上司を殴って車を盗んでしまう始末。
そんな彼がもう死ぬしかないと思っているところに、お金持ちっぽい子供がやってきた。
彼は一発逆転を狙い、誘拐を企てるが、その子供はなんとヤクザの親分の子供だった。


荻原浩節・満載のコメディーです。
誘拐犯となった主人公の男のダメっぷりと、子供に振り回されていくサマが、
ところどころでクスッと笑ってしまいます。

読んでいくうちに、この犯人に感情移入してしまい、
なんとか無事に誘拐を成功させてあげたいと思ってしまいますが、
そこに数々のピンチがふりかかって、ドキドキしながら読んでしまいました。

読み終わった後に、どこか心が温かくなる一冊。
読みやすいですし、荻原さんの本を読んだことが無い人は、
この本から読んでみてもいいと思います。


個人的5つ星:☆☆☆☆


海 小川洋子

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小川洋子さんの短編集です。
何気ないけど、ちょっといいなと感じさせてくれる日常を描いたもの。
しかし、どれも明確なオチや展開はありません。
まるでキレイな詩を読んでいるかのような、なだらかなお話です。

小川さんの最近の代表作「博士の愛した数式」の入り口だけを切り取った感じなんでしょうか。


「海」
恋人の家に結婚の挨拶にいった青年。
恋人の一回り下の弟に、変わった楽器を見せてもらう。

「風薫るウィーンの旅6日間」
フリープランでウィーンに行った主人公の女性。
同じプランに参加していた老女の頼みを聞いて、
彼女の恋人がいるという養老院へと付き合うことになる。

「バタフライ和文タイプ事務所」
パソコンではなく、様々な論文をタイプする事務所で働く女性。
壊れてしまった文字を持って、活字管理人の元へ行くことに。

「銀色のかぎ針」
4ページ足らずのショートストーリー。

「缶入りドロップ」
3ページ足らずのショートストーリー。

「ひよこトラック」
ドアマンをしている中年男性の新しい下宿先には、話さない少女がいた。
その少女は、縁日で売るためのひよこが乗ったトラックに興味深々だった。

「ガイド」
小学生の主人公の母親は、フリーのガイドだった。
ある日、少年は母親についてガイドに参加することになった。


どれもあっさりしたショートストーリー。
男性の読者は物足りなく感じてしまうと思います。


個人的5つ星:☆☆☆



千年樹 荻原浩

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ホラー系小説。


とある地方の山の中に立っているクスの木。
樹齢1000年だと言われているこの木の下では、
時代を超えて色んな人間模様が繰り広げられる。
ただ、いつの時代も不気味な存在で、「子盗り(ことり)の木」と呼ばれ続け、
子供が神隠しにあう場所と言われていた。


今回は、”笑いが一切ない”タイプの荻原作品。オムニバス作品になってます。
別れ、出会い、憎しみ、絶望など、色んな人間が様々な感情を持ってこの木を訪れます。
基本的に、1つの章で2つの時代が描かれ、大抵1つは現代、1つは戦国時代や明治時代などが描かれています。
交互に書かれているのですが、読みにくさは感じることはないでしょう。

ただ、基本的にどの作品も「この後どうなったのか想像にお任せします」的な終わり方なので、
不気味さはよくわかりますが、なんかしっくりしない読後感でした。

こういうタイプの作品の常で、最後の章ではすべての作品が一つの線でつながれますが、
どんでん返しというほどではありません。

各ストーリーは、設定もそれぞれ工夫されていて惹きこまれましたが、
荻原さんの作品にしては、ちょっと感情移入しづらかったかもしれません。


個人的5つ星:☆☆☆


ゆりかごで眠れ 垣根涼介

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ハードボイルド小説。裏社会の人間の人生を描いたもの。


コロンビアで、移民日系二世として生まれた男の主人公。
彼の両親はゲリラによって殺され、1人のコロンビア人によって育てられた。
いつしか、彼もまた多くの若者がそうであるように、ギャング団の1人に。
天性の頭脳から、そのトップに立ち、組織を大きくしていった。
そして、現在。日本の警察に捕らえられた仲間のために、彼は日本にやってきて
彼を警察から奪還する計画を練る。


かなりの長編作品。
前半は、コロンビアで彼が成長していく姿を。後編ではそんな彼が日本に来てからの行動が描かれています。

個人的に、ハードボイルド作品は回りくどいことが多く、苦手だったんですが、
この垣根さんが書くものはスピード感があり、表現がわかりやすく、すいすいと読むことができました。

他の方のレビューを読むと、この作品は垣根作品としては評価が低いようです。
実際、展開が完成されている「ワイルド・ソウル」や、キャラがしっかりと立った「ヒートアイランド」などに比べ、
展開、キャラが、それぞれ比較すると若干物足りない気も。
しかし、あくまで他の垣根作品との比較ということで読めば・・・という話で、
一つの小説としては、やはり「おもしろい」部類に入ると思います。

いまだ垣根涼介作品を一冊も読んだことがないという人は、
やはり「ワイルドソウル」「ヒートアイランド」あたりから読むことをオススメします。


個人的5つ星:☆☆☆☆


病む月 唯川恵

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金沢を舞台にした、ショートストーリーが10本入っています。
30代半ばまで唯川さんが金沢で暮らしていたからなんだとか。

物語は、すべて女性が主人公。
ホラーあり、ちょっといい話あり、ファンタジーありとバリエーションが豊かです。


「いやな女」
金沢でフレグランス店を営む女性。ある日、彼女は高校の同級生の女性に出会う。
その同級生のことを、昔から「いやな女」と思っていた。

「雪おんな」
雪の降る日にバーで出会った男。
34歳の主人公は、その男と一夜を共にし、毎年その日だけバーで出会う約束をした。

「過去が届く午後」
7年ぶりに出会った元同僚の女性。
彼女は、「借りたまま忘れていた」と色んなものを贈って来るようになった。

「聖女になる日」
子供を失い、もうすぐ離婚をしようとしている女性。
彼女は、「一緒に心中してくれる」という噂のある男性と出会った。

「魔女」
母が病に倒れ、自分の妊娠して困っていたところに、叔母(父の妹)が
母の介護を手伝ってくれることになった。が、それから色んな不幸が起きるようになった。

「川面を滑る風」
息子を連れ、久しぶりに金沢に帰省した女性。彼女の父は和菓子職人だった。
地元で、父の弟子であり中学の同級生だった男性と再び再会した。
「愛される女」
美しく、それを武器に様々な男と付き合っていた母親が年を取り、入院した。
それを介護する娘は、そんな母と対照的に、美しいわけでもなく、
化粧やおしゃれにも気をつかうことがなかった。

「玻瑠の雨降る」
ガラス工芸作家を目指す主人公は、自分の工房欲しさに、愛人契約を結んだ。
ところが、徐々にその男が自分に飽きてきたと感じるようになる。

「天女」
かつてソープランドで働いていた女は、その客と結婚して幸せな毎日を送っていた。
そこに、かつて自分のヒモをしていた男と再会する。

「夏の少女」
病気となり、残り少ない人生を地元の金沢で過ごしたいと考えた女性。
彼女は、そこで不思議な少女と出会った。


個人的に、唯川さんのホラーものは好きじゃないんですが、
そういうホラーもの(「過去が届く午後」など)意外は楽しく読めました。
オチがちゃんとあるので、読後感がスッキリします。


個人的5つ星:☆☆☆